2011年08月27日

【意見】日本社会の高齢化と解決へ向けた取り組み

双葉浪江でございます。
まだまだ暑い日が続きます
どうぞ皆様ご自愛ください。

わたしは幼少時代をニューヨークで過ごしたのですが、
当時のニューヨークは「お年寄りが多い」という印象でした。
公園やお店にいってもとにかくお年寄りばかりで
テレビのスターも比較的年齢層が高い。
住民の年齢層とアメリカの富が結びつき
身体の弱い方にやさしい街作りが進んでいて
高齢者だけでなく身体障害者にも便利な街でした。
特にバスは既にバリアフリーになっていました。

バカンスでヨーロッパに行くと更にお年寄りが多く、
老人国家のようにさえ思いました。
しかもその時期のパリやブリュッセルは、
スーツ姿のサラリーマンは勿論、道路工事の人もいない。
お店もほとんど休み。
働いている人の姿が見えなくて
この国の人はいったいいつ働いているのかしら?
などと思ったものです。

逆に若者の国だと思ったのが日本。
歩道はどこも狭く車優先で、
歩道橋も階段が急で登りにくかった。
駅でエレベーターがあるのは駅ビルとデパートくらいで、
みんなが階段を昇り降り。
足腰が弱ったらたいへんです。
お年寄り・身障者には非常に動きにくい街作りで、
電車やバスに乗ることは勿論、トイレも使いづらいものでした。

今の東南アジアを見てみると
当時の日本にタイムスリップしたような気分になります。
香港を除き、歩道は未整備で、車優先の街作りなのです。
ホテルやデパートといった施設にも、細かな段差が残っている。
車椅子用のスロープには物があいてあって使えない.....
これらの国ではまだバリアフリー化に投資する段階でなく
大型ショッピングモールや新しいビルの建設を優先する、経済成長第一主義なの
でしょう。
まるで建築ラッシュに沸いた日本の1960-70年代そのままの様相です。


さて、今の日本はどうなっているのでしょうか。
先日の地震の際、テレビに映る被害者に高齢者が多いのを見て、
この国はまぎれもなく高齢者社会なんだと痛感しました。
気になって調べてみると、2005年の時点で
高齢者の人口比が20%の大台に乗り、欧米を抜いています。
地方ではさらに高齢化が進んでいて、
山形・秋田・島根・山口・高知の5県で既に人口比が25%を越え、
岩手・徳島・鹿児島の3県でも間もなく25%を突破しそうです。
(参考 #1, #2)

既に人口の四人に一人が高齢者という実態。
これから益々高齢化が進んでいく中で、日本の商業・サービス業は
高齢者を中心とする流れになるのではないでしょうか。

この動きを先取りしているお店が東京にあります。
東京・新宿の京王百貨店です。
以前は普通の百貨店で、エルメスやルイヴィトンなどもありました。
ところが提携していた島屋が同じ新宿地区に出店することとなり、
面積も狭く、提携を切られてしまうので、
生き残るのは大変だろうと業界では囁かれました。

しかしながら京王は、
百貨店のタブーであったウォーキングシューズや大きめのサイズのパンツなど
中高年が欲する商品の品揃えやサイズ等を豊富にし、
ターゲットを絞るという作戦に出たのです。

島屋を迎えた新宿百貨店競争、蓋を開けてみると、
1位 伊勢丹(売場面積 64,296平米)
2位 小田急(同 50,954平米)
3位 京王(同 43,216平米)
4位 高島屋(同 55,000平米)
と京王は健闘、売上高の坪単価では三越本店を越えるほどになったのです。
京王百貨店の「中高年に強い店作り」という作戦はうまくいきました。

実に、京王の売上の約7割が50才以上の顧客によるもので、
特に4F婦人服フロアは全売上のうち
65才以上の売上割合が63%
50才以上の売上割合は86.5%
と中高年層の比率が圧倒的に高いのです。

また、商品構成というソフトの面だけでなく
百貨店本体というハードにも工夫が見られます。
試着室を広くする、什器を10cm低くして商品を見やすくする、
孫を連れてくる客のため、女性用トイレの中に子供の男子トイレも併設する、
な どなど。
この作戦が功を奏し、いつ行っても中高年の女性と家族連れで
活気に満ちています。
ハードの構成は、集客に直結しているのです。
(参考 #3, #4)

ところが、高齢或いは身体の不自由で、
百貨店まで行けない人もたくさんいます。
自由に使えるお金は若い人より多いけれど、買い物には出られない。
買物したいが買物出来ない、という埋もれているユーザーも実は多く、
店側としてはこの層を取りこぼしたくはありません。

そこで急速に拡大しているのがデリバリーサービスです。
百貨店をはじめ、大手スーパー、コンビニエンスストアまで
デリバリーサービスを行っています。
昔で言う「御用聞き」が、
いま「デリバリーサービス」として復活しているのです。

なかでもセブンイレブンはかなり本気を見せており、
牛乳やお菓子から、野菜、冷凍食品、
加工済みのお弁当、おかずまで毎日配達しています。
ユーザーは仕事に忙しい世代だけでなく、
独り身の高齢者も多いと聞きます。
福祉行政が業者に委託して、デリバリーと安全確認を同時にするという
複合福祉サービスの形態が生まれていくかもしれません。
(参考 #5)

企業がデリバリーで末端のケアを拡充してゆき、
行政・立法・司法はその基盤を整えてゆく。
来る高齢化社会の、これは解決策なのではないでしょうか。


冒頭で話題にしたバリアフリー化、
これは日本では遅れていましたが、法整備が出来つつあります。
平成6年には「ハートビル法 (高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建
築物の建築の促進に関する法律)」、
同12年には「交通バリアフリー法 (高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用
した移動の円滑化の促進に関する法律)」が施行され、
更にこの二つを統合し、オフィスビルなども対象となる
「バリアフリー新法(平成18年施行)」が生まれました。
これが、現在の「万人が利用できる環境=ユニバーサルデザイン」推進の
背景となっています。
(参考 #7, #8)

最近は日本でも駅の改札外にもエスカレーターやエレベーターが増えました。
例を挙げると、東京の小田急電鉄。
この会社では70駅中69駅で段差無しの移動が可能になりました。
身障者用トイレも全駅に設置しています。
少しずつ、やさしいハードウェアが増えてきています。
公道でも、信号機をコントロールするソフトの開発が進み、
安全な歩道が増え、高齢者にはつらい歩道橋は減りつつあります。

このように、緩やかではありますが
日本にも高齢者にやさしい、住みやすい環境が出来ていくのではないか?と
わたしは期待しています。



参考

#1 「諸外国の65歳以上人口割合の推移 (1950年〜2010年)」
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/kouhou/useful/u07.htm

#2 「都道府県別65歳以上人口の割合 (昭和35年、平成17年)」
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/kouhou/useful/u09.htm

#3 「高齢者市場の活性化に関する調査研究報告書」
http://www.gpc-gifu.or.jp/chousa/houkoku/16/koureisha.pdf

#4 「百貨店常識破り、無借金経営にー京王百貨店」
http://www.iist.or.jp/wf/magazine/0287/0287_J.html

#5 「セブンミール」
http://www.7meal.com/contents/0000/index.html

#6 「駅の段差解消」
http://www.odakyu.jp/guide/business/barrier-free.html

#7 「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関
する法律」
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/barrier-free.html
http://www.mlit.go.jp/barrierfree/barrierfree_.html

#8 「高齢者、身体障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令」
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8D%82%97%EE%8E%D2%81%41%8F%E1%8A%51%8E%D2%93%99%82%CC%88%DA%93%AE%93%99%82%CC%89%7e%8A%8A%89%BB%82%CC%91%A3%90%69%82%C9%8A%D6%82%B7%82%E9%96%40%97%A5&H_NAME_YOMI=%82%A0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=H18SE379&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1


posted by nonukesmorehearts at 02:09| 主婦・双葉浪江の御意見箱